中川ひろたか ✕ 新沢としひこ インタビュー
「世界中のこどもたちが」
ふたりのコラボ

MC
保育園でのご経験がおふたりともやっぱり大きかったり、その当時のことを思い出されてっていうことも、歌詞や曲をつくるときにあったりされるんですか?
中川
そうね。やっぱりつくったからには子どもたちに歌ってほしい。「もう1回、もう1回」って言って何度も何度もせがんだりするじゃない?あれがすごく理想の姿ですね。そういう歌になってほしいっていうのと、あと砂遊びとかやってる時にこう、「ふんふんふん♪」とかって出たら最高かもしれないと思って。
中川
ブランコ乗りながらとか。「なんでもない時に口ずさむような曲ができたら最高かな」と思ってますね。
MC
わあ。素晴らしい。
中川
まあ届いてほしいと思う、つくったもん、音楽。僕絵本もやってるけど、「あれもう1回読んで」って言って。まあごちそうみたいなもので、「もういいです」じゃなくて、「おかわり!」って。そんな気持ちでいますけど。
MC
中川さんは男性で初の保育士、ということで。
中川
まあ僕が働いた時は、もう100人ぐらいいたんです。実際全国で。園長の息子とか実際に働いてはいたんですけれど、まだあのその頃は保育園で男性が働いてはいけないっていう法律があった。女子に限る、っていう法律が。それはもう男女差別なんだよね。で、家庭にお父さんとお母さんがいるように、保育園にお父さんとお母さんがいてもいいんじゃないですかっていう運動が実って、僕が入った翌年に保母試験っていうのを受けられるようになって。それでその100人が一斉に受けたんだけど、受かったのは僕だけだったの。だから、日本で最初の保育士って言われ方をしてるんですけど、実際はもう働いてる人はいっぱいいた。
MC
おふたりのご経験が本当にたくさんの素晴らしい曲を生んでるんだな、というふうに思わせていただきます。
新沢
あ、僕は、ちょっとちがっていて。えっと、よく「子どもたちの仕事をしていたから、ああいう詞が書けるんですね」みたいに言われるんだけど、そう思ったことはあんまりなくて・・・
新沢
たいがい、そういうふうに言ってくれる人っていうのは「子どもの姿を見て、子どもの姿を観察したりとかして、ああいう詞を書いてるんだ」って思ってるんですけど、子どもの姿を観察して書いたことは1回もないんですよ。
MC
うんうん。
新沢
それは、基本的に詞を書くときは自分で書いてるので、「自分の中の子どもで書いてる」っていう感じなんです。だから、子どもたちと遊んで、自分の中の子どもが一緒に元気になるとかそういうことはあったりするけど、「あ、子どもってこういうふうに考えるんだ」とか、「子どもってこう感じるんだ」みたいにして書いたことは実は1回もなくて。「僕の中の子どもが感じたままに書く」っていうことを基本にしてるんですね。
新沢
でも、その自分の中の子どもを維持する意味で、子どもたちと遊んだりしたことっていうのはとても力になったりとかしているので、間接的には全然まちがってなくて。保育の道にいたことによって、自分の中の子どもが生き生きしたってところはあるんですけど。あの、子どもの姿を大人が外側から見て、「子どもってこういうあどけないこと言うよね」みたいな感じで書いてると、ダメって自分で思ってるんですよね。自分で本当に思わないとダメと思って。
中川
曲もそうだよ。僕の中の3歳児が、その歌を喜んでるかどうか。で、3歳児の僕が「いいね!おもしろいね!たのしいね!」って言ってくれるまで粘る。そこまで良いメロディが出てくるまで粘る。それはもう絵本なんかもきっとそうだけど。僕すぐ3歳になれるんだよ。特技で。
中川
その中で、まあちょっと言葉も知ってる音楽も知ってる人が3歳になって、その3歳の子が喜んでるかどうかをいつもまあ、聞いてるっていうかね。そんな気がちょっとしてますけどね、まあ似た感じですけど。
新沢
あ、だからね、僕中川さんの歌が最初の頃、「大人っぽい歌ですね」って言われたり、「これは童謡とはちがう」って言われたこととかもあったんです。でも、「え?」って思って。僕は子どもから歌える歌をつくってるってつもりだったんだけど、いわゆるなんかほら、あのまあ「いい子だね♪」とか「仲良くしましょう♪」みたいな歌とちょっとちがうっていうか。
MC
はい。
新沢
なんかこう「大人っぽい感覚で書かれてる」って言われたこととかあったんですね。だけど、実際には中川さんが全国でコンサートしていたら、子どもたちが支持して歌ってくれるようになったりとかしたので、すごく「子どもたちそうだよね」って僕は思ったりとかしてるんですけど。それ実は、僕が幼稚園の時にね、幼稚園で「ちいさい秋みつけた」っていう歌を歌ったんです。
MC
はい。
新沢
その時先生がレコードをかけてくれて、歌を聴かせてくれたの。あの歌って、変な歌じゃない?不思議な。
中川
うん。
新沢
「だれかさんが だれかさんが だれかさんが みつけた」、「とかしたミルク」とか、「うつろな目」とか、「はぜの葉赤くて 入日色」とか。なんか「え、どういう意味?」っていう歌じゃない?だけど、僕はその「意味がわからないけど素敵」と思ったわけ。
MC
うんうん。
新沢
なんだろう、何か得体の知れない文学的なものっていうか、「謎の美しい言葉たち」みたいに思って。で、僕はもう魅了されてしまって、年長さんの時に「すごく素敵な歌!」と思ったんですよ。で、その感覚が自分の中に残っていて。だから大丈夫と思った。子どもがね、いろんなことを、「あ、この歌ってわかる」っていうんじゃなくって、「なんだか素敵、この歌」って思う感覚って絶対にあると思ってて、そこに向けて書くところもちょっとあるんですよ。だから「子どもたち絶対にわかってくれる」ってなんか思ったりとかして書くところがあって。
新沢
だから大人たちが「この歌って大人っぽいんじゃない?」って言っても、大人たちが言ってるだけぐらいに思ってて、僕は大丈夫と思ってた。
MC
はい。
新沢
しかも中川さんってメロディがとても強かったりとかするから、中川さんの曲もとってもそうで。すごいポップスの要素をたくさん入れてやるけど、子どもたちにとってキャッチーで面白い曲っていうのを書くって。中川さんの曲ってそういうところがあるから、そこをとても信頼していて。だから、ふたりともそういう波長がちょっと近かったのは本当によかったなって僕は思ってるんですけど。だからすごく僕たちは、「子どもたちのことリスペクトして信頼してる」ってすごく思ったりしてますよね。
MC
すごい素敵なお話です。
中川
本当、ふたりで歌をつくり始めの頃、「メリー・ポピンズ」だったり、「サウンド・オブ・ミュージック」だったり、「ああいう作詞作曲家チームになろうよ」って言ってたからね。
新沢
そう、ああいう歌をつくりたいねって。大人も魅了するような、それでしかも大人の子ども心に刺激をするようなっていうか・・・
中川
本当に子どもの頃好きだった歌たちだったからね。
新沢
「あれが音楽の原点」っていうところが僕にはやっぱりあって。あの分かりやすくて、心がおどるようなあの歌たち。歌詞もシンプルでっていうね。
中川
すごいよね。
新沢
もうそれが原点で、そこが共通理解としてあったことがとても大きかったですね。
中川
ラッキーだった、僕も。
新沢
「あの最初の時に出会ったのが中川さんじゃなかったらどうなってたの?!」とか思って。なんか、恐ろしいと思っちゃって。
中川
ハッハッハッ
MC
全然ちがう曲になってたかもしれないですよね。
新沢
中川さんはちがう作詞家に出会って、僕がちがう作曲家に出会ってって。全然ちがったかもしれないわけじゃないですか。
MC
おふたりの奇跡の出会いですね。運命的な出会い。
中川
そう、「会うべくして」ですね。
MC
運命的な出会いと、おふたりの信頼関係によって・・・
中川
作詞家志望の人がいたなって思い出したってさっき言ったけど、実はその6年の間に、色々観察してるわけよ、彼のことを。で、いろんな人形劇、影絵劇団とかやってて。
新沢
あ、そうそう。中川さんがメンバーにいた影絵劇団に、僕がお手伝いで入ったりとかしてちょこちょこ関わってはいたんです。
中川
「あ、ここはこうした方がいいんじゃないか」っていうアイデアだったり、批評眼だったり。彼の批評眼が素晴らしくてね。で、それはだから、ものごともちゃんと見ている目を信頼できていたんだよね。だからそういうの見てるから、ただいたずらにたのんだわけじゃ全然なくて。「ちゃんと見てたよ」って感じかな、俺も。
MC
素敵です、本当に。おふたりのご関係と、この曲に対するおふたりの想いですとか、いろんなエピソードが聞けて。本当に貴重なお話をたくさんしていただけて、素敵なお時間になりました。もしよろしければ、おふたりの今後のご活動などお話しいただけますでしょうか?
新沢
僕と中川さんって面白くてっていうか。どっちもシンガーソングライターで、たぶん僕の詞にいちばん曲をつけた作曲家は中川さんなんです。で、中川さんの曲でいちばん詞を書いた作詞家はたぶん僕なんです。だけど本当は、中川さんいちばん曲つけてるのは中川さんの詞なんです。
中川
そう。
新沢
僕もいちばん詞つけてるのは僕の曲なんです。だからいちばんは、ふたりとも自分、自分なんですよ。だから実は独立したシンガーソングライターたちなんです。そこがすごく面白いっていうか、実はあんまり依存しあってないところがちょっとあって。そこが面白い関係っていうか、自立した関係っていうところもちょっとあって。
MC
やっぱりご自身で曲をつくられたり、曲をつけられたり、詞を書いたりするのとはちょっとちがうまた新たなものが生まれるっていう感覚なんですか?
新沢
そうですね。だから基本は「自分で詞も曲も書く」で、中川さんとつくるっていうのは、「スペシャルな感じ」っていうか。そういう感覚があって、ふたりともその二本立てじゃないけど、そういう感じが僕は面白いなって思ってるんです。
新沢
中川さんは中川さん独自の活動っていうのがあって、作曲プラス絵本作家ってところがすごいあるので、それはちょっとまあ、不満っていうんじゃないけどね。「中川さんいちばんは作曲家でしょ?!」とか思うんだけど。
中川
ハッハッハッ
新沢
一般的には中川さん絵本作家の方が有名だから。中川さんそういうとこすごいんですけど。
中川
歌もやってるしね。
新沢
言われるんだよ?僕なんかは「世界に誇る作曲家でしょ?」って思ってるんだけど。
新沢
でも一般的には絵本作家の方が・・・
中川
新しく知る人はね。
新沢
「え、ちがう、だから作曲家なんだってば!」って僕なんかはずっと思ってるんですけどね。そうなんです。でも中川さんその代わりそうやって、ご自身の活動とかすごいたくさんされてて。
中川
あと僕はね、最初、「トラや帽子店」とかそういうバンドをつくったんだけど、まあ解散したり、またつくったり解散したり。っていうなんかその、さかのぼって考えてみると、新しく出会った人と組んで何か新しいものをつくるとか、出会った人に「詞書いてみない?」て言ってみたり。そういうことの連続だったような気がするんだよ。新沢くんに詞をたのんだっていうのも、書けそうな人に必ず声かけるっていうのをいまだにやっていて。
新沢
すごいですよね。
中川
中学校の同窓会に行ったら、「私中川くんから詩たのまれた」って。
新沢
え?昔?
中川
昔。その人は書けなかったけれど、「私たのまれたことがある」って。昔からそれやってるってことだよ。今度は新しくこの間ね、家建てるんでカーテンが必要だからカーテン屋行ったら、そのカーテン屋がすごくロック好きの人で、一緒にバンド組んだりとかね。
MC
ええ?!すごいです。
中川
CDもつくっちゃったんだよ。カーテン屋さんとカーテン屋の客が。それとかもうすごい上手なギタリストと出会ったんで、今はもうアルバム作成中ですけどね。そうやってなんかいろんな出会いで何かできそうだと、面白そうだなと思ったらやっていくっていうクセになっていて、この先どんな人と出会えるのか楽しみだし、どんなことが待ち受けているのかっていう。そういうスタンスでいつもいるんですよ。
MC
素敵です。
中川
新沢くんとまたね、新しくつくりたいと思ってるんだけど。でも彼の詞が先にある方が僕は面白いなと思っていて。逆もすごい上手なんですよ。「雨ふり水族館」だとか「僕たちの歌」とか。曲が先なんだけど。
新沢
「一歩」とかね。
中川
「一歩」もそうだ。
新沢
「はじめの一歩」じゃないですよ、「一歩」っていう。
中川
そう、「一歩」。いやーすっごく得意だと思う、後から詞をつけるの。まるで最初に詞があったように書くからさ。まあそこのイントネーションもすごくメロディに合わせて言葉も選ぶっていう力もやっぱりすごくあって。まあどちらでもいいんだけどつくろうよ、また。ね?
新沢
ね。さっきだからね、中川さん自分の詞にいちばん書いてたりするんですよ。だけど、コラボもとても好きで、いろんな作詞家とやってて。で、僕もいろんな作曲家と仕事するし、僕もコラボとても好きだったりとかするので。なんかこう、ふたりともコラボ好き・・・
中川
コラボ好き、うん。
新沢
意外とこのふたりのコラボはそんなにしないみたいなこともあって。
中川
最近全然してない。
新沢
そうですね。あと、1回もグループ組んでないんですよ。中川さんすっごいいっぱいグループ組んでるんだけど。そのグループとの共演みたいなのはあるけど、僕とはグループにならない。その距離感がね、僕と中川さんすごく面白いんですよ。本当に、作家チームっていうか、こう・・・すごいね、ビジネスパートナー。
中川
ハッハッハッ。ビジネスパートナー。
新沢
そう、もう面白いなと思うんだけど、その距離感がすごく良くて。ビジネスパートナーとしてものすごく信頼してるんですよね。こんなに信頼できる人はいないっていう感じで。それで歌をつくらせてもらってるって感じなんです。
MC
そうなんですね。
新沢
だからまあ、お話があったりして、「困ったら中川さんに」、とかはある。そんなに安売りはしないよって感じがあるから、中川さん。
MC
またおふたりの新たな曲が生まれるのをすごく楽しみにしております。
中川
ということになるよね。
新沢
そうね。だから生涯現役の感じ。歌つくるっていうのは定年がないから。つまりもう40年近くつくってるわけだよ。
中川
本当は50年。
新沢
え?
中川
最初の曲から50年。来年で。
新沢
来年50年?!
中川
「おーいかばくん」が50年。
新沢
「おーいかばくん」ね。
中川
そうだよ。最初、俺の。作曲人生というか。ふたりでつくったのは・・・40年?え?1987年だったから・・・40年。あ、来年40年。
新沢
すごいね。
中川
そう。すごいですね。「世界中のこどもたちが」ができて40年。
新沢
だから出会ってね、40年後にどんな歌つくるかとか楽しみですね。
MC
全国におふたりの曲を楽しみにして待ってる方は本当にたくさんいると思いますし、私もそのひとりなので。ぜひこれからもおふたりで、素敵な曲をつくっていただけたらすごく嬉しいです。
MC
楽しみにしています。ありがとうございました。
中川
ありがとうございました。
新沢
ありがとうございました。